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2017年1月21日 (土)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 94

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 77
「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第76


<1989年10月31日>


Ma chérie !  Mlle Yumi !
 とうとう10月も終りました。毎日Posteをのぞき乍ら…。
Mlle Yumiの手紙が来ないのは きっとスケジュールが一杯
だと思い、それは私がいつも願っているMlle Yumiの
Succèsに直結しているものと思ってあきらめています。
 でも現実にはとても淋しい。
優れた芸術家のMlle Yumiと魅力あふれる生身の
Mlle Yumiとの2人のYumiを好きになった私の
運命の当然の結果でしょう!
 しかしParisとTokyoとはあまりにも遠い。
ことに音楽的に貧しいTokyoに住む身には!

(編者注/Ma chérie !  Mlle Yumi ! は、最愛の人!ゆみ嬢!。Poste は郵便ポスト。Succèsは、成功)。


Narayumi_satie


 Fontecからの原稿の注文は内容:奈良ゆみの歌唱
キャラクター等についてご自由にお書き下さい。2~3枚
というものでした。Mlle Yumiの氣に入ったように
(或は充分に目的を果たしているか?)書けたかどうか とても
心配です。
 Fontecからcassetteを(原稿を送ってから後に)送って
来ました。聴いてみて書き足りないことが一杯あります。
Je vous demande pardon !


(編者注/Fontecはレコード・CD会社のフォンテック。Cassetteはカセットテープ。Je vous demande pardon ! は、ごめんなさい!)。


これらのSatieの歌曲のMlle Yumiの演奏を聴いて
いると 私は眞珠の粒の連なっている見事なネックレス
を思い出します。どの眞珠も燦然と輝いています。
作曲家を悩ます音域(高、中、低)のどれも美しい。
特にun diner à l’Elysée はMlle Yumiの演戯が
目に浮び思はず笑って了い(それは生理的な快感を伴って)
Trois mélodies de 1886の美しい歌唱では 思はず
涙が出てきます。(自分の曲のcassetteだって こんなに何辺も
聴いたことはありません)


(編者注/1989年11月25日に発売されたCD『奈良ゆみ/サティのうた』
奈良ゆみ(S)ジェフ・コーエン(P)FOCD3256/フォンテック。 un diner à l’Elyséeは、エリゼ宮の晩餐会。Trois mélodies de 1886は、1886年の3つの歌曲<天使たち、エレジー、シルヴィ>)。


Img_0

 Mlle Yumiの美しい声と表現と解釈には今更賛美する
のも愚かですが、でも美しいものは美しい!
 全く素晴らしい人が出て来たものです。聴覚に豪華な
饗宴を楽しみ乍ら 視覚ではPianoの上のPortraitsを飽かず
見ています。この間 12月16日のチラシを見ました。
Debussyで又Mlle Yumiへの傾倒は倍加するでしょう!
 楽しみよりもむしろ何處まで美の沼に溺れていくのか
私自身がこわいのです。
 でも12月にはお目にかかれますね!後1ヶ月!


Img_0_1

ところで10月は(心はとてもDebussyのsentimantaleな会話の中の
風景のように索漠としていましたが)とにかくそれでも
‟桂“のPiano伴奏によるversionsを作りました。
Mlle Yumiに演奏してもらえる機会がもしかあるかも
しれないと思って。夢の又その夢!...。
昨日終った所です。今日copysteに送りました。
(いつか音友版のFl,clavecin,Harpe,Guitar et Perc.を
お送りしたかと思いますが)
Copy 出来次第お送りします。
内容は12音技法によるもの(建築家の説に影響されて)
催馬楽風なもの(山城) 謡曲風なもの、筝曲風なもの
(松琴亭)などが配置されています。

(編者注/フランス語版の作品目録では、Katsura 1957-67 Voix et flûte, clavecin, harpe, guitare et percussionsとKatsura 1989)。



11月28日の ‟二星“が心配です。
演奏ではなく 作品そのものが。
Piano伴奏にするのが不可能なもの2、3曲を
除いて私の歌曲は殆どお手許にあります。


(編者注/Rôéï “Jiséï” 1966 (Deux étoiles de Véga) Voix et 11 instruments (fl, hb, fouet, marimba, vibra, hp, pno, 4vn) と、Jiséï (Deux Etoiles) 1989 
Soprano (jouant perc) et piano)。


Matsudaira


ではお目にかかれるのを楽しみに、心から!
Debussy et Satieを聴くのをたのしみに、
そして もし時間その他(Mlle Yumiの)が許せば
私の作品(Thème et variations <Aki>)と(Piccolo + Perc)
を聴いていたゞけるかもしれないことをたのしみに。


(編者注/Thème et Variations 1983。原曲はD’après Thème et Variations pour piano et orchestre, 1951。盤渉調越天楽によるピアノのための主題と変奏。Akiは、ピアニストの高橋アキ氏。(Piccolo + Perc)は、Netori bonguen et Nyuchô 1986 Piccolo ou flûte et percussions。フルートと打楽器のための「音取、品玄、入調」)。



Je vous embrasse de tout mon cœur,
J’espère fortement votre beau succès
et je vous envoie mille baisers.
Toujours votre tout dévoué
Yoritsuné


(編者注/私は心のすべてであなたを抱擁します。私は強くあなたの偉大な成功を願っています。私はあなたに千のキスを送ります。 常にあなたの献身的な 頼則)。


(ではまた、次回更新時に)。

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