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2016年5月

2016年5月24日 (火)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 93

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 76
「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第75


<1989年9月26日>

Ma chérie !  Mlle Yumi !

Sans nouvelle c’est bonne nouvelle という諺を信じ
ながらも 悲しみも亦 eréctionの為の受胎作用
の條件の一つであることも事実です。


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 9日にTokyoを立たれてから 毎日お便りを
待っていました。
 待つ時間を潰すためには作曲だけ。
 Pour ne pas penser !

  それも昨日 源氏物語よりの2つの作品
の様式で書いていたものが出来上り、3曲となりました。
 それで今日は5線紙の代りにPapier à lettres の
上に字を書いています。
 Photo-Copy が出来上り次第 お送りします。

(編者注/Ma chérie !  Mlle Yumi ! は、最愛の人!ゆみ嬢!。Sans nouvelle c’est bonne nouvelle は、便りのないのは良い知らせ。奈良ゆみ氏によれば、元々はPas de nouvelles , bonnes nouvelles。Eréction は、高揚。Pour ne pas penser ! は、考えないために! Papier à lettresは、便箋)。


Genji24minori


 主題は都落ちする源氏が 最愛の紫
(藤壺の姪)との別れの場面からです。

「源氏がお髪をくしけずろうと鏡をご覧になると
われながら頬がこけてやつれて見えるので女君(紫)
をご覧になって『こんなにやつれきってしまった。
この鏡に映っている影のようですか』とおっしゃると
女君は自分の身を柱に隠しながら、涙をいっぱい
目にためていらっしゃる。


Genji2

 身はかくて さすらへぬとも 君があたり
   去らぬ鏡の 影は離れじ

(私自身はこうして漂泊しましょうとも、いつもあなたの
そばにある鏡に映った私の影は離れないでしょう)

と君(源氏)がお詠みになると女君(紫)は

 〇 別れても 影だにとまる ものならば
     鏡を見ても 慰めてまし

  (お別れしても そこにお姿がとどまるものならば
   鏡を見ても慰められるでしょうに)

とお返しになった。」 以上 円地文子の源氏物語より


そこで今回の順序ですが 次のようになります。
 Ⅰ 藤壺  Ⅱ 紫  Ⅲ 明石
理由は源氏物語の時間的経過に従ったまでです。

 J’espère que ça vous plaira.


Img_7

  名曲や名演奏(あの大森でのSatie !)が 
いつ迄も心を去らないように
Mlle Yumiの image enchantée は常に私の心の中
にあります。そうして 実在の遠く離れている今
空虚な灰色の時は流れ、それに抗すべくもなく
その流れのまにまに身を委ねています。もうぢき
10月です。 12月に少しは近づきつヽあります。


(編者注/J’espère que ça vous plaira .は、あなたのお楽しみになることを願っています。Satieは、作曲家エリック・サティ。image enchantée は、魅惑の写真)。

 En espérant vous revoir, je vous embrasse
ardemment, ma très chère Mlle Yumi, je vous
envoie mille baisers.
   Toujours votre devoue,
        Yoritsuné


(編者注/またお会いしたいです。私はあなたを熱烈に抱擁します、とてもかわいいゆみ嬢。私はあなたに千のキスを送ります。いつもあなたに献身しています、 頼則)。
(それではまた、次回更新時に)。

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