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2016年1月

2016年1月27日 (水)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 89

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 72
(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第71

<1989年9月7日>

Ma chérie !  Mlle Yumi !!

Mlle Yumiを車で送っていきながら 私は独りぎめに
今回は今日ぎりで 後は会えないだらう、
Mlle Yumiはたまに日本に来るので おそらく
今後の為の重要な用件があり、Étoile となる
為の彼女を邪魔するようなことをしてはならない。と。

(編者注/Ma chérie !  Mlle Yumi !! は、いとしい人 ! ゆみ嬢 !!
  Étoileは、星。スター)。
Milkyway

 それでまるで意味のない i – ké – nou – chi (ki)
などという言葉の遊びなどの会話をして貴重な
時間を潰し、も一度会う為の打ち合せなど
全く考えていませんでした。
 本当は二星の“別緒依依の恨”をのべる
べきなのでした。
 私はたゞ Mlle Yumiの傍にいるだけで充分
幸福でした。
 幸福というものはその時はわかりません。
後になってわかるのです。 その時はたゞ時間
が白色に流れていくのです。

 最後の映画の1カットで事態は急変しました。
Dramatiqueな演技があって車がtournerし、
雨にぬれた舗道に立っていたMlle Yumiの
美しい姿はFranceの映画の1シーンでした。
私はいつまでも忘れないでしょう!

(編者注/Dramatiqueは、ドラマティック。劇的。Tournerは、ターン。反転)。

 それから 私の心の中で自分で信じられない位、
強い創作慾が起りました。
 翌朝 私の頭の中で一つの作品の構図が
鮮明に浮び上りました。後は書くだけです。
でも1音符 1音符 それはlettre d’amourの文字の
ように大切に択びました。

(編者注/lettre d’amourは、ラヴ・レター。愛の手紙)。
2


 9月5日にTokyoに戻られるときいていたので
仕上げたのは4日でした。
私は何よりも早くMlle Yumiに見せたくてたまらなく
なりました。車の中での独り極めは勝手に飛び去り、
私は見榮もなく車の中で書いていたゞいた
TelのNuméroを廻し連絡をお願いしました。
 やはり会うことは無理でした。でもMlle Yumiの
声を聞いただけで満足しました。当然の事ながら
夜はなかなか寝つけませんでした。


今日7日は既に2曲目に入っています。
 けれどもやはり急に何ともいえない悲しさが私を捕え
この手紙を書き始めました。
あと3ヶ月、私は書きながらpour ne pas penser
と呟きつづけるでしょう。
 再び譜面に戻って とうとう夜になりました。
時計の針は10時をさしています。
 丁度昨夜 Mlle Yumiの声をきいた時刻です。

明日のconditionを考えてもう止めねば....

Pianoの譜面台の横のAlbumのMlle Yumiの
Photoに“Bonne nuit, dormez bien”といゝ
Pianoの蓋を閉めます....

(編者注/Numéro は、番号。pour ne pas penserは、考えないように。Conditionは、コンディション。体調。Bonne nuit, dormez bienは、おやすみなさい、ぐっすり寝ます)。

20080702173741
 
Je vous embrasse de tout mon cœur,
  Ma tres chére Mlle Yumi,
  Je vous envoie mille baisers !

  Toujours votre tout dévoué
Yoritsuné
 
(編者注/私は心のすべてであなたを抱擁します。
      とてもかわいい ゆみ嬢、
      あなたに千のキスを送ります!
      常にあなたの最も献身的な
     頼則)。

2曲目は少しゆっくり書きます。
出来次第 Photocopy に出し、お送りします。
その時 曲の構造や歌の書かれた情景など
説明します。
 この手紙 8日に出すつもり。
Mlle Yumiのavion より前にTokyoを出て
後から着くでしょう


48_main


(編者注/avionは、飛行機。
この手紙と同じ日付の2枚があり、上の文面の下書きと思われる。清書されたものにはない言葉があり、記録にとどめたい)。

<1989年9月7日> (異版)


Ma chérie ! Mlle Yumi !

 Mlle Yumiを車で送って行きながら 私は独りぎめに
今回は今日で後は会えない、Mlle Yumiは
恐らくたまに日本に来るのでスケジュールが一杯
つまっているだろう、しかも私の理想とする
Etoileになるために 重要な。
 それで まるで意味のない i – ké – nou – chi (ki)
などという言葉の遊びなどの会話をして、日本に
滞在するであらう数日の間に 私が割り込むなど
という相談はまるで考えていませんでした。
 Mlle Yumiの名刺に書かれたTelのNumeroなどは
後で役に立つなどと思ってもみず 上着のポケットに
入れたままでした。

 私はMlle Yumiと一緒にいるのが好きです。
これは幸福なのです。しかし幸福というものはその時
はわかりません。後になってわかるのです。
 私がMlle Yumiを愛していることは多分sensible
なあなたにはもうおわかりでしょう。
 最後の映画の1カットで事態は変りました。
車がtournerして あの雨にぬれた舗道に立って
いたMlle Yumiの姿はフランスの映画の1シーン
そのものでした。


 それから私の心の中で自分では信じられない創作慾の
衝動が起りました。
 8月28日の朝、私の頭の中で一つの作品の構図
が鮮かに浮び上りました。
 後は書くだけです。
でも一音符一音符づゝ それはlettre d’amourの
文字のように大事に書きました。
 そして9月5日には書き上げました。
私はMlle Yumiに早く見せたくなりました。
ポケットのTelのNuméro を廻し、連絡をお願い
しました。
 やはり会うことは無理でした。昨夜はなかなか眠れ
ませんでした。


今日はもう2曲目の予定の1/2位 書きました。
急に何ともいえない悲しさが私を捕え 手紙を
書き始めました。
 あと3ヶ月、私は書きながらPour ne pas penser
と呟くでしょう!
 とうとう夜まで書きつゞけています。
10時です。
 もう止めねば....
Pianoの譜面台の横のAlbumのMlle Yumiの
Photoに“Bonne nuit, dormez bien”といゝ
Pianoのフタを閉めます....

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