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2015年10月

2015年10月28日 (水)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 86

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 69
(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第68


 
(編者注/今回の書簡は<1989年7月27日>付を掲載するが、同じような文面のものが<1989年7月16日>付で残されている。この時代は航空便で往復書簡が交わされていて、後年のFAX送信の日付はない。推測されることは、松平頼則氏の歿後に、奈良ゆみ氏が松平ゆき様から書斎に残っていた手書きの「奈良ゆみ氏宛の書簡」を受け取られ、そのなかに手紙の下書きも含まれていた、ということだ。松平頼則氏は書簡ひとつにも時間をかけられた。意に達しなければ改訂を重ねた。したがって後の日付の方を採る。異動は、随時〈編者注〉で紹介しよう)。


Nice15

<1989年7月27日>その1


 Mlle YumiのNiceでのRécital を直接きいたという
Yoriakiの友人が先日Tokyoに帰って来ました。
 彼はMlle Yumiのinterprétation を口を極めて
絶賛していた由です。

(編者注/Mlle YumiのNiceでのRécitalは、ゆみ嬢のフランスのニースでのリサイタル。この時のニースでのメインのコンサートは1989年7月1日のFestival MANCA(現代音楽のフェスティヴァルだった。
リサイタル 日本のテーマ
フェスティヴァル・ド・マンカ Festival MANCA
フルート:ピエール=イヴ・アルトー
パーカッション:クロード・ジオ
ハープ:ドゥニーズ・メジェヴァン
ギター:マリー=テレーズ・ギラルディ(Marie Thérèse Ghirardi)
奈良ゆみ氏は、ご自身のホームページの〈年譜〉によれば、ニースで1989年6月29日、ギターのマリー=テレーズ・ギラルディ氏を伴ってリサイタルを、また7月2日にパスカル・デュサパンの作品をフルートのピエール=イヴ・アルトー氏とともに、コンサートに出演された。
Yoriakiは松平頼則氏の長男、松平頼暁氏〈1931-〉。作曲家、生物物理学者。interprétationは、演奏)。

 Je vous félicite votre beau succès !!
私の記憶のécrinにはOmoriでの素晴らしいRécitalの
影像が深く刻み込まれているので成功のimage
がはっきりと想像できます。

(編者注/Je vous félicite votre beau succès !! は、あなたの大成功を祝福します !!  écrinは、宝石箱。Omoriは大森。松平頼則氏は、東京の大森山王オーディトリアムで1988年4月、初めて奈良ゆみ氏の歌声を聴いた。imageは、イマージュ、イメージ)。


Images

 そして次はMessiaen のHarawiの録音のDisque。
このようにしてMlle Yumiの成功の軌跡は永続
していくことでしょう !
 Parisを中心とするMlle Yumiの素晴らしい飛翔は
私を心からよろこばせます。


 Crescendoは希望に接続しているのですから
 Parisといえば今月中旬のTokyoのT.VではFestivalを
狂ったように夜な夜な 光と輝きを画面から撒き散らして
いました。
 あの空の下どこかにMlle Yumiがいるのだらうと
思い乍ら見ていました。

Messiaen2


(編者注/<1989年7月16日>付のここまでの部分を。

 Mlle YumiのNiceでのRecitalを直接きいたという
Yoriakiの友達がTokyoに帰って来ました。
 彼はMlle Yumiのinterpretationを絶賛して
いた由。
 それをきいて私はほんとうに嬉しく思いました。
大森でのMlle Yumiの演奏とover up して私の心
の中で想像出来ました。

(編者注/over upは、overlap〈オーバーラップ〉のことだろう。映画の技法で、一つの画面が消えないうちに次の画面を薄く映し出し、次第にその画面を濃くして行く方法。二重写し。転じて一般に、一部分が重なり合うこと)。

 名曲と名演奏は一生心の中に残るものです。
今はMessiaenの“Harawi ”の練習で大変でしょう。
 美しい声を持った美しい鳥のように飛んでいる
Mlle Yumi !


  TokyoのT.Vではこの所毎晩Paris ! Paris !! Paris !!!
です。そしてMlle Yumiを思います。パリは
 私の行った1975からずゐ分変りましたね。

Dsc01338

(それではまた、次回更新時に)。

2015年10月10日 (土)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 85

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 68
(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第67

<1989年6月26日>その4


私の創作欲を猛烈に刺戟しています。
多分 何等かの音の形で実現したいと祈っています。
少し時をおいて充分発酵させねばなりません。

この間の源氏の話は口のほうが早すぎました。
私の作曲する前の心の準備が未確定だったのです。
(実は既に3つariaを書きましたが 何と余りにも
あからさまに感情が出てしまっているのです。N.Gです)

Genji

(編者注/モノ・オペラ『源氏物語』Genji Monogatari (Le Dit du Genji) 1990-93、オペラ『宇治十帖』Uji-jû-jô 1998など、最晩年の松平頼則氏は紫式部の「源氏物語」に関心を寄せていた。『ソプラノ、笙、フルート、箏のための「源氏物語による3つのアリア」(1990年)の試作をこのときには行っていたことが判る。作品目録ではTrois Airs de Genji Monogatari*(No.II ) 1992
- Sode nururu (Fujitsubo) - Okuto miru (Murasaki) - Kawarajito (Akashi))。

 現代の作曲家は一作ごとに何か問題を提起しなければ
なりません。
 源氏についてはconsidérer ! réfléchir ! et bien penser !
です。
  とはいえ私の作品に私自身の心の入るのを否定している
わけではありません。 Mlle Yumiには既におわかりでしょう。


(編者注/Considéré ! Réfléchir ! et bien penser ! は、「考えなさい!」と、同じような意味を持つ語が並ぶ。あえて訳せば「注意深く見つめなさい!反省して考えなさい!そしてよい判断をなさい!」)。

 今日は梅雨は休みです。夏のように暑い!
この時期Parisは一年中で最も美しいと この間何かで
読んだ記事に書いてありました。私はParisの町の匂いが
好きです。Caféのテラスで道行く人達を眺め乍ら
Mlle Yumiとおしゃべり出来たらという思いは仝じです。

01888159229

 私は毎夏箱根にいきます。あそこの湖(あしの湖
=Lac de Roseau) が とても好きです。
 写真のThèmeにしたらよいPaysageが沢山あります。


(Lac de Roseauは、葦〈芦〉の湖。Thèmeは、テーマ、主題。Paysageは、風景、景色。
このことについて、奈良ゆみ氏から補足説明のコメントを頂いた。
《頼則先生は毎年夏には箱根の富士屋に滞在しておられました。
お招きくださいましたが、都合が合わなくて伺えませんでした。
もうひとりの作曲家、ジャチント・シェルシからもローマの
お宅に滞在するように幾度かお招きを受けたのですが、
それも断念しているうちにお亡くなりになりました。
その頃は眼の前のコンサートにばかり心が捕われていて、時間的な余裕もなく
今になってほんとうに残念に思います。》)。


Ashinoko_01

もし今年の夏Mlle Yumiが日本に来られる機会に
一緒に行けたらどんなに幸福だらうと思っています。
8月の末を待つのは楽しいPatienceですが 忽ち
織女(Deux étoiles の女性)のようにParisの空に
行って了う あのDeux étoiles の dédié à Mlle Yumi
が私の歎きになるとは あの時は考えてもいませんでした。


(編者注/Patienceは、忍耐。Deux étoilesは、二つの星。七夕の夜にだけ織女と牽牛が会える。ソプラノとピアノのための『朗詠・二星』(1989)。dédié à Mlle Yumiは、奈良ゆみに捧げる)。

 ではLondre ― Nice  そしてMessiaen のHarawiの
御成功を心から祈っています。

(編者注/Londre ― Niceは、ロンドン―ニース。Messiaen のHarawiは、フランスの作曲家、オリヴィエ・メシアン〈1908-1992〉の『ハラウィ』(Harawi, chant d'amour et de mort,1945)。奈良ゆみ氏は1989年6月29日と7月2日にニースでリサイタルを開いている)。

 Je vous embrasse avec beaucoup d’affections
fantastiques et croyez – moi que j’admir toujours
votre talent brillant et merveilleux ,
Toujours votre tout dévoué
Yoritsuné


(編者注/私は大きな愛情であなたを抱擁します。素晴らしいと信じて。私はいつもあなたの輝かしい驚くべき才能を称賛します。
つねにあなたの最も献身的な 頼則)。

Milkyway


Portraitを上手に(つまり本物より以上に)撮ってくれる
 Photographe と只今交渉中です。多分私の足が直って
から(7月に)になるでしょう。
 Tokyo にいらしった時には是非avec Mlle Yumi
と一緒にPhotoを撮りましょう!


(編者注/Portraitは肖像写真。Photographeは、写真家。avec Mlle Yumiはゆみ嬢と)。

(それではまた、次回更新時に)。

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