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2015年3月

2015年3月29日 (日)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 73

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 56
(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第55回

<資料/浅草序曲>その2

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奈良ゆみ氏は、日本の女性作曲家の作品を採りあげてコンサートを開き、アルバムをつくることを考えておられました。
その話を聞いてすぐに思い浮かんだのが2001年12月14日に山村サロンで初めて聴き、打たれた吉田隆子でした。歌曲『君死にたまうことなかれ』と『お百度詣』。ヴァイオリンとピアノのための『お百度詣』と『ヴァイオリン・ソナタ』。浅井順子さんのソプラノ、若林暢さんのヴァイオリン、アルバート・ロトさんのピアノ。そのときの報告は「山村サロン会報」2002年前期 Vol.27に載せていますので、お目通し下さい。
そして奈良ゆみ氏は楽譜を求められます。彼女は書いておられます。
「松平先生から吉田隆子のお話を伺ったことがなかったのですが、彼女の歌曲集(音楽の世界社)を手に入れて、開いた第一頁目に松平頼則の文章があり、驚きとてもうれしく思いました。「ポンチポンチの皿廻し」は私もとても好きな曲です。遠く懐かしくでも同時に薄暗がりの中で哀しくそら恐ろしい夢を見ているような、、、」。
「山村さんのところでのコンサートで知り、深く感動したのがずっと心に残っていました」。
意外なところで意外なつながりがあったものです。松平頼則氏は『浅草序曲』の時代に吉田隆子の作品を認めていたのです。


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松平頼則氏のような作曲家は、作曲だけでは食べていけません。キャバレーでピアノを弾いたり歌を作ったりして糊口をしのいだシェーンベルクやヴァイルらと同じように、松平氏は浅草の街の底に潜って、お金を稼ぎました。
ストリップ劇場での仕事は楽しかったよ、と奈良ゆみ氏に語られたことがあります。女の人を見るのもさることながら、「何でも弾いてよかったんだ。自作でも、フランス音楽でも、怒られることはなかった」と。

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奈良ゆみ氏の企てはCD『歌・太陽のように - 明治・大正・昭和に凛々しく生きた日本の女性作曲家たち / 奈良ゆみ, モニック・ブーヴェ』(ALCD-7134)として結実しました。吉田隆子の他、金井喜久子、松島彜、渡鏡子、外山道子の作品が収められています。

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(それではまた、次回更新時に)。

2015年3月 8日 (日)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 72

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 55
(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第54回


<資料/浅草序曲>その1


松平頼則氏が奈良ゆみ氏に送ったのは、書簡だけでなく彼女に初演を託する楽譜は無論のこと、もとより発表するつもりがない<愛猫のための子守唄>など遊びの作品、そして作品目録には入れない旧作の楽譜なども含まれていた。


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今回掲載する『浅草序曲』は一度は出版された作品だ。自らの作品目録には戦前の作品として『南部民謡Ⅰ』(1928-30)、『南部民謡Ⅱ』(1938)、『古今集』(1939-45)の3曲のみ採られているが、『吉田隆子歌曲集』(音楽の世界社)に、こんな文章を寄せられている。

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 「フォレ、ドビュシイ、ラヴェル等のフランス歌曲の演奏による本格的な紹介者だった照井栄(詠)三が新興歌謡協会という会の主催で、当時の日本の前進的な作曲家たちの一連の作品を歌ったのは1932年のことだった。
 その年の6月26日に、私のジャズ風な「浅草序曲」と一緒に、吉田たか子の「ポンチポンチの皿廻し」の照井栄三による演奏を初めて聴いた。私はその時、即座に深い感銘を受けた。
 私はその日本的な音感と一見ラヴェル風なモダニスムの傾向に深いシンパシイを感じた。
 一瞬後、私はこの作品にもっと別な意味を発見した。私は分析した。
 それは彼女が無意識的に身につけていた伝統的な邦楽的要素(琴)とレアリスム(社会性)を除外しては考えられない。音楽的にはあの旧式な古風な調性音楽とは別にフリジア旋法を採用し(当時ヨーロッパの新しい音楽の傾向だった)何よりも芸術として最も貴重な独創性が存在していた。
 私を驚かせるのは50年も時が経った現時点で、ふと「ポンチポンチの皿廻し」のメロディが、無意識に私の耳にどこからか浮かぶ。
 古来「名曲」というものはこのような訪れを私たちにするものである。
 私は実にこの曲は優れた作品であると同時に「名曲である」というオマージュ(賛辞)を結論として捧げたい!」

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(楽譜は、あと4頁あります。それは次回更新をお待ちください)。

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