最近のトラックバック

« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »

2014年6月

2014年6月30日 (月)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 46

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 30
(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第29回)。


<2001年9月6日>

Chère Yumi !
長いFAX うれしく読みました。
100人一首はYumiに対する愛情とは別に
職人的な動機で書いたので、ついdédicationをおとしてしまったのです。
御めんなさい! それから現在は上野学園とは関係がないので直筆のスコアはそのままお持ちください。

(編者注/Chère Yumiは、かわいいゆみ。100人一首は、百人一首。藤原定家が京都・小倉山の山荘で選んだとされる小倉百人一首。Vocalises en forme de tanka (2001)-Hyakuninn ittshuとして作品目録に記載されている。『短歌の形式によるヴォカリーズ―百人一首』(2001)。dédicationは、献身。御めんなさいは、ごめんなさい。原文のまま。上野学園は、以前教授として奉職されていた上野学園大学)。


Photo


古沢さんのMr.は、美男子でした。彼女の結婚の動機もそこにありました。
私のまだ無名の頃、彼女には随分世話になりました。古今集の初稿の演奏やら、
Parisに私が最初に行った時、色々な作曲家に紹介状を書いてくれたり。
BoulezがFigures Sonoresを初演してくれた時、原地からのレポートを書いてくれたり―(これは何處かへ失くしてしまい残念です)

(編者注/古沢さんは、ソプラノ歌手の古沢淑子(1916-2001氏。1937年から第二次大戦を挟んで15年間、1952年までパリに留学、クロワザに師事。帰国後、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」の日本初演(1958年11月28日)ではメリザンド役をつとめた。その時の指揮者はジャン・フルネ(Jean Fournet, 1913 – 2008)。その後40年を経て、1998年12月16日フルネが同曲を再演するときに選んだメリザンド役が奈良ゆみ氏だった。パリで公演されたモーリス・オハナの一人オペラ「三つのオハナの物語」を客席で聴いていたフルネの指名だった。古今集は『声とピアノのための「古今集」(1939-1945)』。


C0050810_6173838

Parisは、パリ。Bourezは作曲家/指揮者のピエール・ブーレーズ(1925-)。
Figures Sonoresは、『フィギュール・ソノール(1956年)』。『MUSIC SINCE 1900』(Nicolas Slonimsky , SchirmerBooks) に1957年6月1日、チューリヒで「国際現代音楽協会祭」で世界初演された記録があった。発表時から欧州の音楽家に受け入れられた作品のひとつ)。


Img_2342_2


ひどい暑さだった夏も過ぎようとしていますが、この頃は夜のtoiletが様相が変り、ノドのかわきがひどく一晩のなかにコップ一杯の水をのみ乍ら過します。
何のことかわからない夢をみます。
直ることのない、でも終りを予言することの出来ないma vieです。
希望というものは殆どありません。
運のまにまに……
(編者注/toiletは、トイレット。のみ乍らは、飲みながら。ma vieは、私の人生)。

La grâceは私の好きな作品です。
そこにはYumiに対する初々しい愛情がこめられていますから、Pianoパートはそんな配影も持っていますから省略は出来ません。
来年のsolo voiceのprojetをたのしみにしましょう!


Img_2343


(編者注/La Grâce 1991、と仏語の作品目録にある。『ラ・グラース』の日本語の題名は『七月の詩 La Grâce (1991年7月』。詩は松平頼則氏。《池 冷しくしては 月 ゆらめきて 優雅なり/松 青うしては 風そよぎて 優美なり》。CD『松平頼則作品集Ⅱ/奈良ゆみ』に収められた解説に「La Grâce(優美)献呈のための讃辞である」と記されている。
solo voice は、ソロ・ヴォイス。Projetは、プロジェクト)。

今秋、日本に来られたら会いたい。
災難の報、後から知っても慄然とします。
日本も同様な被害がニュースで度々知らされます。
何もこんなことが世界共通にならないでもいいのに。
では又 Je t’aime ardemment
Ton Yoritsune!
 
(編者注/Je t’aime ardemmentは、熱烈に愛して。Ton Yoritsuneは、あなたの頼則)。


(それではまた、次回更新時に)

2014年6月18日 (水)

メシアン《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》朗読テクスト 1

大井浩明リサイタル・シリーズ
《時を得たメシアン Meantime Messiaen》

第1回公演 2014年6月15日(日)午後6時
山村サロン(JR芦屋駅前)
ピアノ:大井浩明  朗読:山村雅治  エレクトロニクス:喜多敏博

O.メシアン(1908-1992):《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(全20曲、1944) ――ドン・コルンバ・マルミオン、モーリス・トエスカのテクスト朗読を伴うオリジナル原案版/日本初演

Na101

幸いにして上記公演も盛況裡に終えることができました。
関係各位、またご来場を賜った皆さま方に厚く御礼申し上げます。


同曲をピアノだけでなく、テクスト朗読付きで「日本初演」をやろう。ということで翻訳者/朗読者として携わることができたのは、ピアニストの大井浩明さんの発案でした。


同公演プログラムに寄稿して下さった平野貴俊さんの解説は、最先端の学問的成果を反映したすばらしいものです。全文は大井浩明さんのブログに紹介されています。
http://ooipiano.exblog.jp/22196867/


主に読まれたのはマルミオンとトエスカですが、彼らについて書かれた部分だけを引用しておきます。

Na102

「《まなざし》をめぐるもうひとつの聖三位一体――メシアン、トエスカ、ドン・コルンバ・マルミオン」 平野貴俊(音楽学)   から抜粋 

3. 源をたどって
本作品がラジオ用の委嘱作品であったことを明らかにしたのは、《まなざし》の創作に際してメシアンにテクストを提供したトエスカ本人であるが 、委嘱主たるアンリ・バロー  Henry Barraud (1900-1997) もまた、1986年に行われたインタヴューで、フランス国営放送音楽監督在任時に委嘱した音楽作品として《まなざし》を挙げている 。


1943年のナチス占領下のパリでは、翌年8月のパリ解放とともにフランス国営放送となるラジオ局、すなわちピエール・シェフェール Pierre Schaeffer (1910-1995) の実験スタジオで、音楽・演劇・詩といった複数のジャンルを横断する芸術番組が創作されていた。この種の萌芽的な試みはのちにミュジック・コンクレートとして結実することになるが、シェフェールの同僚バローはこのような関心にもとづいてメシアンにクリスマス用の音楽劇を委嘱した。台本を依頼されたのは、当時パリ県警に勤めていた文学者モーリス・トエスカ Maurice Toesca (1904-1998) である。


メシアンとトエスカは1944年2月初めころ打ち合わせを行っており、手紙のやりとりとメシアンの手帳から推測すれば、両者は《まなざし》完成の前後に少なくとも3回会っている 。2人はその後3月ころから別々のペースで各自の創作を進め、トエスカは7月後半、ベルナール=ドラピエール邸で開かれた演奏会でメシアンに原稿を渡した。メシアンは8月末に作曲を終え、9月9日にトエスカに電話で完成の旨を伝えているが、そのとき完成された楽章の数は、当初トエスカと合意していた12のちょうど倍の24であった 。


当初は短縮したヴァージョンを放送することも検討されたようだが、件のラジオ劇は結局実現することなく終わった。初演はベルナール=ドラピエール邸で9月11日(トエスカの日記によれば12日)、トエスカらを前に行われた。抜粋初演が行われたのは、ラ・ブリュイエール座で開かれた連合軍のための演奏会だった。ここではロリオがドビュッシーの前奏曲から2曲、《夜のガスパール》、メシアンの《前奏曲》第3、第5、第8曲、《ロンドー》、そしてメシアン自身が〈幼な子イエスの口づけ〉を演奏している。1944年11月17日には、パリ国立高等音楽院のホールで被献呈者ロリオが〈喜びの聖霊のまなざし〉と〈幼な子イエスの口づけ〉を演奏した。


公開全曲初演は1945年3月26日、ロリオによってサル・ガヴォーで行われている。約1か月後の4月29日には、ロリオの代母ネリー・シヴァド Nelly Sivade の家で2度目の全曲演奏が行われ、イベール、オーリック、プーランク、ソーゲ、A. チェレプニン、デゾルミエールらが出席した。トエスカはその後、このとき書いたテクストを再利用し、ミシェル・シリー Michel Ciry (1919-) の挿画を添えて絵本『降誕』を作っている 。この未完に終わった計画のささやかな副産物である『降誕』は、しかしながら1952年に限定150部で出版されたまま、《まなざし》ほどの知名度を得ることなく、古書蒐集家のコレクションの一部となる運命をたどった。
本公演で朗読されるもうひとつの重要なテクスト、ドン・コルンバ・マルミオン Dom Columba Marmion  (1858-1923) の『神秘のなかのキリスト』は、サント・トリニテ教会のオルガニストに着任したばかりのメシアンが司祭から読むことを勧められた本である。それ以降、『神秘のなかのキリスト』はメシアンの愛読書のひとつとなった。メシアンはつねにみずからを信仰者と規定し、「私は生まれつき信仰をもっています」と語っていたが 、実際に彼が聖書を初めてひもといたのは20歳前後のころであり、教会オルガニストになった当初、メシアンのカトリックについての知識は十分ではなかったと推測される。「おとぎ話の超現実から信仰の超自然へと、私は気づかぬままに導かれていったのです」と語っているとおり 、メシアンはシェイクスピア劇や寓話を愛でることを通してカトリックに接近した。


さらにメシアンは、「私にとって最も重要だった人物は母です!」と告白しており 、マリアの母性を描く降誕の物語に興味を示したことは想像にかたくない。《まなざし》の第4曲〈聖処女の最初の聖体拝領〉は母性へのオマージュであるとメシアンみずから述べている 。メシアンはこのほか、具体的なインスピレーションの源として、ジョルジョ・デ・キリコの絵に描かれた卵形の顔の人物(〈時のまなざし〉)、ミケランジェロ《最後の審判》(〈天使のまなざし〉)、マリア、イエス、リジューのテレーズが描かれた版画(〈幼な子イエスの口づけ〉)、アンジェ城に展示されているタペストリー(〈恐るべき塗油のまなざし〉)を挙げている 。


メシアンによれば、音楽面では〈星のまなざし〉の主題が公現祭第2晩課で歌われる「曙の胎から Ante luciferum genitus」に、〈全能のことば〉の主題は韓国の「慢大葉」に由来する 。また、〈恐るべき塗油のまなざし〉には、音価の縮小と拡大が2つのパートで平行する箇所があるが、メシアンによればこれはバリの音楽の特徴である 。 なお、《まなざし》の作曲に着手する2週間ほど前、メシアンはベルナール=ドラピエール邸でバリの音楽のレコードを聴いている 。


Na201


(次回に続きます。それではまた)。

2014年6月14日 (土)

大井浩明リサイタル・シリーズのお知らせ 2

大井浩明リサイタル・シリーズ
《時を得たメシアン Meantime Messiaen》

第1回公演 2014年6月15日(日)午後6時
山村サロン(JR芦屋駅前)
ピアノ:大井浩明  朗読:山村雅治  エレクトロニクス:喜多敏博


1a068ac37d0a637d042babb51b30722c


●O.メシアン(1908-1992):《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(全20曲、1944) ――ドン・コルンバ・マルミオン、モーリス・トエスカのテクスト朗読を伴うオリジナル原案版/日本初演

 I.父のまなざし
 II.星のまなざし
 III.交換  
 IV.聖処女のまなざし
 V.子にそそぐ子のまなざし
 VI.その方によって万物はつくられた
 VII.十字架のまなざし
 VIII.いと高きところのまなざし
 IX.時のまなざし
 X.喜びの聖霊のまなざし


Photo

(幼いイエスの聖テレーズ)

(休憩 15分)


200pxjohncross

(十字架の聖ヨハネ)

●喜多敏博(1967- ):《クエリー・レスポンス》~ピアノとライヴエレクトロニクスのための(委嘱新作初演、2014)

●O.メシアン:《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(1944)
 XI.聖処女の初聖体拝領
 XII.全能のことば
 XIII.降誕祭
 XIV.天使たちのまなざし
 XV.幼な子イエスの口づけ
 XVI.預言者、羊飼いと東方三博士のまなざし
 XVII.沈黙のまなざし
 XVIII.恐るべき塗油のまなざし
 XIX.眠っていてもわたしの心は目覚めています
 XX.愛の教会のまなざし


10402023_478158598982611_6687970280

(アシジの聖フランチェスコ)


いよいよ明日、本番を迎えます。

朗読テクストは、表題の通りマルミオンとトエスカが用いられますが、ほかにメシアン自身の言葉や、バルバロ訳の聖書の複数の節や、カトリックの3人の聖者たちの言葉が語られます。幼いイエスの聖テレーズ。十字架の聖ヨハネ。そしてアシジの聖フランチェスコ。

言葉はすべて日本語です。翻訳に際しては「聴いてわかる」日本語をめざしました。衣装もちょっと変ったものを考えています。

皆さまのご来場を心からお待ち申し上げております。



(≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 は、6月下旬から再開予定です。それではまた、次回更新時に)。

2014年6月 2日 (月)

大井浩明リサイタル・シリーズのお知らせ

大井浩明リサイタル・シリーズ《時を得たメシアン Meantime Messiaen》

山村サロン(JR芦屋駅前) 全自由席 当日¥3000 (前売り¥2500、3回公演パスポート¥7000)
予約/問い合わせ: 山村サロン 0797-38-2585 yamamura@y-salon.com

C0050810_1141060


第1回 2014年6月15日(日)午後6時開演(午後5半開場)

●O.メシアン(1908-1992):《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(全20曲、1944)
 ――ドン・コルンバ・マルミオン、モーリス・トエスカのテクスト朗読を伴うオリジナル原案版/日本初演(朗読・山村雅治)

 I.父のまなざし II.星のまなざし III.交換 IV.聖処女のまなざし V.子にそそぐ子のまなざし VI.その方によって万物はつくられた VII.十字架のまなざし VIII.いと高きところのまなざし IX.時のまなざし X.喜びの聖霊のまなざし XI.聖処女の初聖体拝領 XII.全能のことば XIII.降誕祭 XIV.天使たちのまなざし XV.幼な子イエスの口づけ XVI.預言者、羊飼いと東方三博士のまなざし XVII.沈黙のまなざし XVIII.恐るべき塗油のまなざし XIX.眠っていてもわたしの心は目覚めています XX.愛の教会のまなざし

●喜多敏博(1967- ):《クエリー・レスポンス》~ピアノとライヴエレクトロニクスのための(委嘱新作初演、2014)

Na101

第2回 2014年7月13日(日)午後6時開演(午後5半開場)

●T.ミュライユ(1947- ):《夢によって吊るされ磨かれた片眼のように》(1967)、《河口》(1971/72)、《忘却の領土》(1977)、《別離の鐘と微笑み~O.メシアンの追憶に》(1992)、《マンドラゴラ》(1993)、《仕事と日々》(2002)
●坂本美蘭(1979- ):《魔韻》 (委嘱新作初演、2014)

第3回 2014年8月31日(日)午後5時開演(午後4半開場)

●O.メシアン(1908-1992):《鳥のカタログ》(全13曲、1956/58)
 I.黄嘴鴉 II.西高麗鶯 III.磯鵯 IV.顔黒砂漠鶲 V.森梟 VI.森雲雀 VII.葭切 VIII.姫告天子 IX.欧羅巴鶯 X.腰白磯鵯 XI.鵟 XII.黒砂漠鶲 XIII.大杓鷸
●F.クープラン(1668-1733):《お人好しの郭公》《恋する小夜啼鳥》《おじけた紅鶸》《嘆く頬白》《勝ち誇る小夜啼鳥》(1722)、J.P.ラモー(1683-1764):《鳥の囀り》(1724)/《雌鶏》(1728)、J.J.F.ダンドリュー(1682-1738):《鳥のコンセール》(1724)、L.C.ダカン(1694-1772):《燕》《郭公》(1735)、J.デュフリ(1715-1789):《鳩》(1748)、C.ジャヌカン(1485-1558):《鳥の歌》(1529)

Na102

第1回 2014年6月15日(日)午後6時開演(午後5半開場)
O.メシアン(1908-1992):《幼な子イエスに注ぐ20のまなざし》(全20曲、1944)
 ――ドン・コルンバ・マルミオン、モーリス・トエスカのテクスト朗読を伴うオリジナル原案版/日本初演(朗読・山村雅治)


は、ご案内のように私が朗読を務めます。日本語を読みながら全曲を進めます。集まった資料(原テクストと原テクストの元になった文書)は、仏語と英語で書かれたもので、他にも英国で上演された際にはカトリックの聖人たち―十字架の聖ヨハネや、アシジの聖フランチェスコ―の言葉や行伝が読まれたという情報があり、目下のところはこの演奏会のためのテクストづくりに没頭しています。


そんな訳で、「≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡」は、しばらくの休載になります。

Na602


大井浩明さんのブログは下記です。
http://ooipiano.exblog.jp/


それではまた、次回更新時に。

« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »

twitter

  • twitter
2024年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ