最近のトラックバック

« 2014年1月 | トップページ | 2014年3月 »

2014年2月

2014年2月24日 (月)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 32

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 16

(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第15回)。


(編者注/前項<1999年2月26日>について、より詳しい状況が分かってきたので、補筆の上再掲載。)。

下の画像は、ジョン・ケージから松平頼則氏に贈られたメッセージ。「Gagaku and Serialism a Portrait of Matsudaira Yoritsune」harwood academic publishers より。

Img114


<1999年2月26日>
NHKドキュメンタリーへの怒り

(編者注/1999年2月19日(金)21:30-22:19、NHK総合は「ドキュメントにっぽん」で松平頼則氏を採りあげ『妻に贈る銀の調べ 老作曲家 恋文につけたメロディー』というタイトルを付けたドキュメンタリー番組を放映した。

しかし当時取り組んでいた大作『宇治拾帖』などには触れられず、70年も前の歌曲『雨たりの』ばかりが紹介され、作曲家と奥様のつつましい暮らしぶりがクローズアップされた内容に、松平氏は激怒し、NHKに抗議した。

取材前からすでに表題通りのお涙頂戴のストーリーが出来上がっていて、他のことに関する取材は、それに必要な内容をピックアップするためのカモフラージュだった。作曲家の現在などはどうでもいいことだったのだ。

そのころ書いていた『宇治拾帖』の譜面を見せながら、熱心に説明するところ、また音楽やご自分の作曲の思想についてなど語られたことは全てカット。それより不思議なことに大昔の、奥様の雪さまが詠まれた歌に曲をつけられたものを、また再度譜面をコピーするように指示を受け、その曲を壊れたピアノで弾いている場面を撮影され、それが映像として残った)。


Img116
(前掲書の引用譜例)


(余聞/NHKのドキュメンタリー番組の失態は、2014年初頭に「偽ベートーヴェン」を扱ったことでまた明らかになり、炎上した。全聾者を装った「偽ベートーヴェン」は障碍者を愚弄し、広島を愚弄し、東北の被災者を愚弄し、かの地の若い音楽家を愚弄し、人間の切実な芸術行為を愚弄した。「偽ベートーヴェン」は幾重にも嘘を重ねた。彼が増長するのを加担したのは、紛れもなくNHKの番組だった。

しかし、NHKのドキュメンタリー番組のすべてが屑だとは言えない。たとえば、テレビマンユニオンの坂元良江さんが制作したフィルムは、例外なく描かれる人間への尊敬が満ち溢れて美しかった。『小田実 遺す言葉』には、小田実氏と密接なつながりがあった私も取材を受けフィルムに収められたが、そのまま放映された)。

(下の画像はオリヴィエ・メシアンから松平頼則氏に贈られたメッセージ。前掲書から)

Img115
<1999年4月23日>
Yumiへの想い  (薄くなってよみづらい)

<1999年6月3日>
Berlinの公演。竹島さんが行った。
Genji Monogatariは一種の組曲と思うけれど、
Yumiのinterpretationによって、それはDramatiqueの色が濃く、
Mono – Operaというtitleがふさわしいと感じた。


(編者注/Berlinの公演は、1999年5月6日、7日、8日にベルリンのヘッベル劇場で行われた『源氏物語』。Interpretationは、解釈。Dramatiqueは、劇的。
Mono – Operaは、ひとりオペラ。Titleはタイトル)。

<1999年9月18日>
野平の為のPiano曲、今日Orchestréしました。
目下titleを考えています。

(編者注/野平は、作曲家/ピアニストの野平一郎氏。Orchestréは、オーケストレーション。1999年の作品はピアノ・ソロのための曲なので、ここでは「記譜した」という意味だろう。タイトルは『ピアノのための運動―雅楽の旋律線による』になった)。

<1999年10月10日>
(野平さんの為の曲の説明? 宇治拾帖の浮舟
読みづらいがintéressant!
Prélude 声明などいろいろ Debussy 沈める寺に)
(編者注/奈良ゆみ氏のメモ。Intéressantは、おもしろい)。


(それでは次回更新時に)

2014年2月17日 (月)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 31

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 15

(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第14回)。


Matsudaira


<1999年2月13日>

野平氏の為の曲は、今おぼろげながら頭に浮かんでいます。やがてはっきりしたら書き始めるつもりです。
Yumiはcantatrice élueです。そこから私の音の軌跡が送られてくるのです。


20120909_2169666


(編者注/野平氏は、作曲家/ピアニストの野平一郎氏。彼の委嘱初演した曲は『ピアノのための運動―雅楽の旋律線による』(1999)で、2000年1月に初演された。


野平一郎氏のCDに『松平頼則ピアノ作品選集』(ALM RECORDS ALCD89)がある。解説書には野平氏が書かれた『雅楽旋律線の変容~この録音へ』と題された一文があり、松平氏との交流について記されている。

 「松平頼則先生と面識ができたのは1990年。12年のパリ滞在を引き上げて東京に戻ってきた時、歌手の奈良ゆみさんが松平作品をCD録音したいから手伝ってくれ、と言われた時に始まる。

それ以来、いくつかの作品の録音などでおつきあいが始まり、演奏を聴いていただいたり、自分の作品を見ていただく機会を持つことができた」。「僭越にも作品を委嘱した時には、快く書いて下さり、また亡くなる直前に書いて下さった新しいピアノ協奏曲を、やっと2010年に初演することができた」。

 そのCDに収められた曲は、『前奏曲 ニ調』(1934  )『前奏曲 ト調』(1940)
『6つの田園詩曲』(c.a.1939 – 45  )『リードⅠ(呂旋法による)』(作曲年代不明)
『リードⅡ(律旋法による)』(作曲年代不明  )『ピアノ・ソナタ』(1949)  『6つの前奏曲 主題と変奏の形式による』(1975)の諸曲。続編には1990年頃以降の最晩年の作品が録音されることを大いに期待したい。


586


cantatrice élueは、選ばれた歌手)。


<日付なし>

3 Mélodies anciennes
声だけの為の歌曲。
日本の古い3つの歌
1. 催馬楽
2. 朗詠    の声部の特徴を表現する為の作品
3. 声明
 
(編者注/日本の古い3つの歌は、3 Mélodies anciennesは『ソプラノのための「3つの昔のメロディ」』。 1999年の作品)。

<1999年2月21日>

3 Mélodies anciennes pour Soprano Solo
Ⅲの声明 Baïroを書き終えました。
(編者注/3 Mélodies anciennes は、Ⅰ.Minoyama ⅡKoyo ⅢBaïroの3曲から成り立っている。催馬楽 美濃山、朗詠 紅葉、声明 陪臚<ばいろ>。

CD『声の幽韻』松平頼則作品集Ⅲ 奈良ゆみ(ソプラノ)』(ALM RECORDS ALCD-94)にはこの中から2曲、『Ⅰ催馬楽 美濃山』と「Ⅲ声明 陪臚』が収められている)。
.
<1999年2月24日>
声明Baïroを短3度下のを書いた。

<1999年3月6日>
今日、声明できました。

818dfo6jl_aa1500_

<1999年2月26日>

NHKドキュメンタリーへの怒り

(編者注/1999年2月19日(金)21:30-22:19、NHK総合は「ドキュメントにっぽん」で松平頼則氏を採りあげ『妻に贈る銀の調べ 老作曲家 恋文につけたメロディー』というタイトルを付けたドキュメンタリー番組を放映した。
しかし当時取り組んでいた大作『源氏物語』などには触れられず過去の小品ばかりが紹介され、作曲家と家族のつつましい暮らしぶりがクローズアップされた内容に、松平氏は激怒し、NHKに抗議した)。

(それではまた。次回更新時に)。

2014年2月10日 (月)

≪声の幽韻≫松平頼則から奈良ゆみへの書簡 30

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 14

(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第13回)。


<日付なし>

(CDへの原稿など。セピアと銀。
 源氏物語についての原稿)
いづれにせよ、3 源氏物語は小説的な終末はない。
どこで終わってもよいと思うけれど、一応紫の死で終末としてある。

6142i94iqnl


Img098_2


(編者注/『セピアと銀』はCD『松平頼則作品集Ⅱ/奈良ゆみ』(ALM RECORDS ALCD48 1999.5.30)の解説書に収められた松平頼則氏の文のタイトル。副題は「『南部民謡』と『古今集』について」。


音と色彩について面白いことを書いている。「増4度あるいは短7度はセピアを感じるし、長7度あるいは短9度は銀を感じるし、イ長調は春を、ト長調は水を、ホ長調は花の咲いた畠を感じる。従って、ドビュッシーの作品はセピアで、ラヴェルの作品は銀なのである」。


このCDでは『曲目解説』も松平氏が書いていて、冒頭の『朧月夜』(1992-93)の3曲、「朧月夜に」「木枯らしの」「心から」についての解説文がある。

51yy4mf4c2l


そこで紹介されている先行のCD『松平頼則作品集Ⅰ/奈良ゆみ』ALM RECORDS ALCD39 (1992.6.25)には『ソプラノ、笙、フルート、箏のための「源氏物語による3つのアリア」』(1990)と『ソプラノとピアノのための「二星」(朗詠)』(1967、改稿1989)が収められている。松平氏はこのCD解説書にも『楽曲解説』を書き、もう一文『奈良ゆみ讃』を寄せている。

『奈良ゆみ讃』
彼女が歌う時、作曲家が五線に書けなかった色彩や光や虹や香りや、そしてそれだけでなく遠い国々や千年以上も経った時までも喚起し、人びとを魅了する。
人びとはその体験や記憶や幻想の再現を希望する。
ここに今、彼女の傑れた演奏の録音されたCDが現れ、何度でもそして何時でも聴くことの出来る歓びがある。
     
                                                                                                   松平頼則)。


<1996年6月12日>

……芸術家はいつも孤独です。
そしていつもdignitéを持…… 必要です。

(編者注/dignitéは気品、尊厳。「持…… 必要です」の……部分は判読不能。意味は「持っていることが必要」あるいは「持ち続けることが必要」であると推測できる)。


<1998年2月7日>

Yumiと知り合って10年経ったのですね。……
この世で目には見えない至高の説明不能な不思議な精神的なものが、
私の音を導いていったからです。私はひそかにそれを誇らしく思っています。

今回出版された本は、Benitez神父。
音楽之友が日本の作曲家の集を出す計画があり、柿沼敏江が私の分を……

(編者注/下の2行については詳細は書かれていない。本は、Joaquim M.BenitezとKondo Jo『Gagaku and Serialism (Contemporary Music Review)』 Routledge刊 1998.9.1初版 (ホアキン・M・ベニテス/近藤譲 共著『雅楽とセリエリズム』のことだろう。同書の序文の日付は1997年8月。音楽之友社のほうは不明)。


9789057550911


<1999年3月22日>

私の本、Robert某(editeur)が中心になっているようなので、4月に(手に入れる方法など)相談しましょう。
(編者注/Robert が誰であるかは不明。editeurは、版元)。

<1999年3月25日>

Editeur(英)の住所。(編者注/Editeurは、版元)。

それではまた、次回更新時に)。

2014年2月 3日 (月)

≪声の幽韻≫29

松平頼則氏に関しての奈良ゆみさんの所蔵する手稿など 13

(「松平頼則氏から奈良ゆみさんへ送られた手紙Fax」  第12回)。

32

(編者注/この項目からを初めてお読みになる方は、前回の《声の幽韻28》から続けてお読み下されば、と願います。なぜなら今回は前回に掲載した<1996年11月23日>の書簡の続きだからです)。

<1996年11月23日>  その2

人類の古代の歌曲の歴史をたどると、宗教曲と民俗曲に二分されます。
 DebussyのHarpの曲「Danse religious, danse profane」を書いたのは、この辺の起原を指示しています。(注4)


Img_503040_32246611_0

(クロード・ドビュッシー)

 Thémeは催馬楽です。これは約1000年前の流行歌を雅楽の理論にムリヤリはめこんだもので、これこそ元は古代の流行歌でありシャンソンであったわけです。
 当時の催馬楽の歌詞は残っていて、中にはあまりérotiqueで禁止されたものもあります。(注5)

 Yumiが私流にDéformeした催馬楽を歌うとき、古代の流行歌でありChansonである原点をとらえていたわけです。
 ですからYumiの原点と私の原点とは一致しています。
 私は現代風に変想しています。(注6)


Ukihasi0504


(鷲宮催馬楽神楽)

 Yumiが時々指摘した私の音楽のErotismは、人はいくら変装しても人間の根元の性というものは死ぬまで存在しているものだということです。(注7)
 それ故Chansonは粧わない人間本来の喜怒哀楽の原点をついているから人々の心を捉えるのです。

 Yumiは人間の原点をとらえた稀に見る芸術家以上の高い存在であることを改めて(漠然と感じてはいたけれど)認識しました。


 (私の病気はYumiの想像しているように辛い。
  漠然とたのしかるべき未来を見ずに終るような予感があります。
  音楽的には3月のLyon、或は秋のGenji。
  現世の望みはYumiを愛すること、それ等すべて……)

Toujours je t'aime 
Yoritune    (注8)


201306061

(奈良ゆみ『詩人の魂』2013.06.06のちらし)

注4)
Debussyはフランスの作曲家クロード・ドビュッシー(1862-1918)。「Danse religious , danse profane」は『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』。原題はDanse sacrée et danse profane(1904)。独奏ハープと弦楽合奏のための音楽。

注5)
Thémeはテーマ、主題。Erotiqueはエロティック。

注6)
Déformeはデフォルメ。変想は松平氏の用語。

注7)
Erotismはエロティスム。

注8)
Chansonはシャンソン、歌。3月のLyon、或は秋のGenjiは、翌1997年3月のリヨン公演とパリの「秋のフェスティバル」公演。Toujours je t'aime Yoritune は、「いつも、いつまでも愛しています 頼則」)。

(それではまた、次回更新時に)。
 


« 2014年1月 | トップページ | 2014年3月 »

twitter

  • twitter
2024年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ