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2012年5月30日 (水)

大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』 その41

第4章 大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』と同時代のシェーンベルク評価 9

大田黒元雄とプロコフィエフの項目でふれた徳川頼貞についての続きです。彼は大田黒元雄や山田耕筰らと同じ時期、1913年から1915年まで海外に留学して、帰国後は音楽会場「南葵楽堂」をつくったり、日本に西洋音楽を広めるために尽力した人物です。


詳しいことは前回に記したのでご参照ください。彼の著書に、春陽堂書店から1943年(昭和17年)に出版された『薈庭楽話』があります。『プロコフィエフ』と題された小文の後半を同書から引用します。


「私はプロコフィエフを優れた作曲家であると思った。それで或る時彼に、日本滞在の記念としてピアノ・ソナタを自分の為に書いて貰えまいかと頼んだ。彼は、亡命中で気分も落着かないが、近い中に箱根のフジヤ・ホテルに行って日本を離れる前の数日をゆっくり送る心算であるから、出来ればその時作ってお送りすると返事して来た。


プロコフィエフはそれから間もなく米国に向け立って行った。そして遂に落着かなかったと見えて、私の注文の作曲は出来なかった。


後になって、大正十年の春、第二次外遊の際、巴里(パリ)のテアトル・シャンゼリゼーで偶然プロコフィエフと邂逅した。それはロシアン・バレーの会で、ストラヴィンスキイの『火の鳥』や『春の祭典』などが公演されたが、その時私の直ぐ近くに、プロコフィエフ君がモノクル(引用者注:monocle 単眼鏡 片眼鏡)をかけた紳士と座っていた。私を見付けると彼は休憩時間に私の処に来て、久し振りに相見る喜びを顔に現わして再会を祝した。


そして、日本を立ってから米国を通り巴里に来て、今は此処(ここ)で自分の仕事に没頭していると語った。また、自分と一所のボックスにいるのはストラヴィンスキイだ。彼にあなたの事を話したらお目に掛りたいと云っているからお会いになりませんかというので、私はプロコフィエフの紹介でストラヴィンスキイと握手した。


ストラヴィンスキーは見た処よりずっと社交的で話も上手であった。旧知のプロコフィエフはどちらかというと言葉の少ない人であったが、ストラヴィンスキイはよく話した。ストラヴィンスキイは私に、自分はパリの興行が済むと伊太利(イタリア)に行かなければならないが、秋には巴里に帰って来るから、その時はゆっくりお目に掛って色々お話がしたいと云った。


けれども私はその年の秋の始めには米国に渡って仕舞ったので、遂にストラヴィンスキイと再会することが出来なかった。それから二年後、大正十二年の九月、関東大震災があった時、プロコフィエフは大変親切な見舞状を呉れた。彼は友情に厚い人である」。(了)


以上が「プロコフィエフ」の項。このほかにも「大西洋上のパブロ・カザルス」、「徳島で第九交響曲を聴く」、そして「プッチーニの思い出」など印象深いひとこまがいくつもあります。それらについては、最近この本はGoogleブックスで電子ブック化されているので、興味のおありの方はご覧ください。
http://nankigakudo.blog60.fc2.com/blog-entry-49.html


さて、ロシア・バレエ団の話題が出てきました。ニジンスキーが所属していたディアギレフのバレエ団を徳川頼貞は見ましたが、山田耕筰は彼らのベルリン公演を見ました。では、大田黒元雄は、というと、やはりロンドン公演を見ていたのです。次回はそのことを。それでは。

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コメント

こんにちは。初めてコメントさせて頂きます。記事の中の薈庭楽話ですが1941年発刊の50部限定非売品(おそらく関係者のみに配布されたもの)をご存知でしょうか?私、先日大阪難波の古書店で見つけました (私のものは50部中の28番)。内容的には1943年版と変わらないと思いますが、和歌山県立図書館の南癸音楽文庫に1943年版があるので近いうちに確認したいと思います。

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