最近のトラックバック

« 藝術交響空間◎北辰旅団 第26回公演『奉教の花薫る峠』 | トップページ | 大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』 その33 »

2012年2月 4日 (土)

大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』 その32

第3章 大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』(24)


大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』(大正4<1915>年5月7日初版発行)の本文は、これまで紹介してきたように、バッハを起点にしてシェーンベルクに至る、その時代、22歳から23歳にかけての著者が選んだ60人の作曲家たちの群像でした。

そして、この本には『附録』があります。「本文掲載以外の百楽家」と目次にはあり、目次の示す363頁を開くと「本文掲載以外の百楽家の生死の年代並びに其の主なる作品」という正式な、長い見出しがあります。それが391頁まで。392頁から399頁までが「人名索引」。作曲家の名前をアルファベット順に原語で並べてあります。そして401頁にあたる紙面に「奥付」があります。私の持っているものは、大正10年11月3日の三版であり、当時は2円50銭で書店に並べられていました。発行所は「音楽と文学社」。発売所は「東京堂書店」。


『附録』に記された、本文記載から漏れた音楽家たちのことを、ここで再び記録しておきたい。
なぜなら作曲家の評価は音楽学者や評論家など専門家が決定づけますが、これはその狭い時代の「権威」によってであるにすぎず、時代の流れによって変化します。また、音楽の現場である音楽会場での「人気」は聴衆の喝采が決めますが、これだって実に移り気なもので、ときには無責任ですらあります。


前者の例、専門家による同時代の作曲家の評価の「否定的」な見解だけを集めた本があります。たびたび引用させていただいた『名曲悪口事典』(音楽之友社)がそれですが、いや、この本、じつに痛快。時代の権威たちが余すところなく感性の浅薄、知識のなさ、知性の愚昧さを暴露しているからです。
しかしながら、同時代の記録は貴重なものです。権威などではなく熱烈な音楽愛好家だった青年、大田黒元雄の『バッハよりシェーンベルヒ』の『附録』にも、1914年の時点において不遇だった大作曲家の名前が並びます。

Img210_1_2


「ブルックナー  1824-1896
近代の墺国に出た有名な楽人。九種の交響楽を出した。そしてワグナーの崇拝家であった」。
これだけです。大田黒氏が留学したロンドンでも演奏されることはなかったのでしょう。


「マーラー     1860ー1911
ボヘミヤの人。交響楽の作家として有名である。其の作品では交響楽の『夏の朝の夢』 (Ein Sommermorgentraum) 『自然の生活』 (Naturleben) などと名付けられたものが優れて居る』。

『夏の朝の夢』は交響曲第3番です。同曲の題名は、はじめ「楽しい生活―夏の夜の夢」で、「楽しい学問-夏の朝の夢」になり、「夏の真昼の夢」にもなりました。この交響曲は『自然の生活』とも呼ばれていたのでしょうか。それとも「交響曲第4番」のことなのか。あれは『天上の生活』ですが。

Img217_8

「ラヴェル     1875-(本書初版時には存命)
現代仏蘭西(フランス)の名作曲家。印象派の作家として、デビュッシイに次ぐ。多数の管弦楽曲、洋琴(ピアノ)曲、歌などがあり、其の中 舞踊『ダフニスとクロエ』 (Daphnis et Chloē) 管弦楽曲『ラプソディ エスパニョル』 (Rhapsodie espagnole) 洋琴曲『ヴァルスノーブル・エ・サンチマンタル』 (Valses nobles et sentimentales)が知られて居る」。

ラヴェルについては本文中に入れて欲しかった。これだけで終わる作曲家ではないことは今なら自明ですが、本書出版時には、ラヴェルはまだ39歳でした。


「スメーターナ(スメタナ)   1824-1884
ボヘミヤ近代楽の開拓者。歌劇並びに音詩(交響詩)を作り、其の歌劇の中では『交易された花嫁』(『売られた花嫁』 (The Bartered Bride) が、極めて名高いものと成って居る」。
ボヘミヤ音楽の父が本文に入らなかったのは解せません。


「シュトラウス家
ウィンナに於ける、有名なワルツ作家の一族。ヨハン、ヨセフ、エドワードなど皆世に知られて居る」。
彼らが大作曲家の地位を獲得したのは、20世紀・演奏家の時代に入ってからでしょう。なにしろウィーン・フィルを指揮する巨匠指揮者が彼らの曲を演奏すれば、世俗音楽が芸術作品に変貌する。ブルーノ・ワルター、クレメンス・クラウス、ハンス・クナッパーツブッシュ。フルトヴェングラーでさえ『皇帝円舞曲』を録音しているのです。


スッペもニコライもオッフェンバッハらオペレッタの作曲家も『附録』にいます。
タルティーニ、パガニーニ、サラサーテ、ヴュータン、ヴィニアウスキ、クロイツアー、ヨアヒムなど名ヴァイオリニスト/作曲家たちがいます。
またブゾーニ、クレメンティ、クラーマー、クーラウ、レシェティツキイ モスコフスキ、パデレフスキなどピアノ演奏史に係わる音楽家(教則本を書いた教育者を含んで)います。「コンコーネ  1810-1861) 声楽の教師として名高い人」の簡潔な記述でわかるように、大田黒元雄は教則本を記した人たちも「偉大な音楽家」と見なしていたのです。本文中にはチェルニーが挙げられていました。これは一つの立派な見識です。

Img212_3


それではまた、次回更新時に。

   

« 藝術交響空間◎北辰旅団 第26回公演『奉教の花薫る峠』 | トップページ | 大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』 その33 »

コメント

山村 雅治さんのブログ楽しくて結構チェックしてるんですよヽ(゜▽、゜)ノ実は読者なんです(笑)普段はあんまりコメントとかしないほうなんだけど(照)見てるだけなのもアレかなって思ってメッセしてみました(笑)山村 雅治さんに仲良くしてもらえたら嬉しいです(‐^▽^‐)一応わたしのメアド載せておくので良かったらお暇なときにでもメールくださいヘ(゚∀゚*)ノココログやってないからメールしてもらえたら嬉しいですヽ(゜▽、゜)ノまってるねえv(^-^)v

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1399324/43982750

この記事へのトラックバック一覧です: 大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』 その32:

« 藝術交響空間◎北辰旅団 第26回公演『奉教の花薫る峠』 | トップページ | 大田黒元雄著『バッハよりシェーンベルヒ』 その33 »

twitter

  • twitter
2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ